Bluetooth meshは、プロフェッショナル向けの最も効果的かつユーザーフレンドリーなワイヤレス照明技術として各業界に浸透を続けています。ですが、国際規格であるBluetooth meshとそのワイヤレス機能はまだまだ誤解されている面もあります。今回の記事では、どういった誤解があるのか、そして照明デザイナーが本当に得られるメリットは何かをご紹介します。

Bluetooth®技術を正確に理解するには、近年培われてきた技術開発について詳しく追う必要があります。Bluetoothはもともと、パソコンと周辺機器を接続するケーブルに取って代わる近距離通信技術として設計されました。ですがこの20年間、その技術は急速な進化を遂げたのです。時とともに、Bluetooth技術はさまざまな近距離通信分野にその枝葉を広げていきました。例えば音声伝送やウェアラブル分野では、ほぼすべてのデバイスがBluetooth技術で動いています。Bluetooth SIG(Special Interest Group)は、メーカーと顧客の双方にとって信頼に足る国際規格を提供してきた実績があります。これは実際にはどういった意味を持つのでしょう?例えばモバイルヘッドセットを買うとしましょう。携帯電話がBluetoothを搭載してさえいれば必ず動くため、どの機種なら対応しているかを気にする必要すらありません。これは今や当然のように思われがちですが、その裏には正確で透明性のある仕様、厳格な認証手順、Bluetooth SIGに貢献するテクノロジー分野のトップ企業による継続的な努力があります。Bluetooth SIGは、メッシュトポロジーを標準化することで、コネクテッドな照明ビルディングオートメーションといった複雑な分野で世界的な相互運用性を確保し、各社が使いやすいソリューションを提供できるようにすることを目指しています。市場で国際規格を確立するというのは困難で時間のかかるプロセスですが、Bluetooth SIGがこれまでも繰り返し達成してきた取り組みです。今、世界は急速に変化しています。私たちは、照明分野においてBluetooth技術が中心的な存在となる幕開けを目の当たりにしているのかもしれません。

ワイヤレスの現状

Bluetooth meshは、単一障害点のない完全分散型のアーキテクチャを実現した唯一のワイヤレス規格です。

では現在、Bluetooth meshによる照明制御ネットワークで何ができるのでしょう?できることは沢山あります。ワイヤレス制御は成熟し、今や大半のプロフェッショナル向けの照明分野で求められる高い信頼性と妥協のない操作性を実現しています。これにより業務を停止しない形でのレトロフィットやコミッショニングの大幅な簡素化、極めて柔軟な構成がついに現実のものとなりました。Bluetooth meshのネットワーク規格はオープンなものであり、世界中のあらゆる照明分野の企業がこのメリットを享受できます。

昨年、複数企業で実際にBluetooth meshを用いた照明システムが導入され、その優位性が改めて証明されています。Bluetooth meshの照明制御ファームウェアとコミッショニングツールを提供しているSilvairで、私たちはこの最先端のプロジェクトが進む様子を目の当たりにする機会に恵まれました。さらにこれまで小規模なパイロット事業から大規模な商業展開にいたるまで、様々な組織がBluetoothのパートナー企業の製品を通じて施設のサービスを止めること無く旧式化した設備のレトロフィットを行い、柔軟なワイヤレス制御システムの導入に成功してきました。Bluetooth meshの照明制御がいかに汎用性に富んでいるかを示す例をいくつかご紹介します。

  • ヤマハ発動機の米国倉庫(米国、プレザント・プレイリー)

ヤマハが保有するエンジンの大規模倉庫では、照明が常に点灯していました。そこで人感センサーとBluetooth meshを導入し、照明を人の有無に合わせて自動制御する効率的な照明システムを実現しました。現在320台のデバイスが配備されており、1台1台が倉庫内の高天井照明器具を制御しています。

たった1度の週末の作業だけで全照明のレトロフィットに成功しています。同社はオフィス業務を一切停止することなくLEDのアップグレードを行い、360個のノードからなるBluetooth meshの照明制御ネットワークを配備しました。またBluetooth SIGのコミッショニングツールを活用し、人感センサーと採光システムを駆使した制御システムの導入に成功しています。

ウェスターナー・パークはアルバータ州中部でも最大級の施設で、展示会や農業、エンタメ、スポーツに利用されています。複数のパビリオンを備え、敷地面積12万平米を超える同施設では現在、Bluetooth meshの照明が導入されています。管理者が信頼性の高い手動制御を望んだため、センサーは使われていません。かわりに、EnOcean製のワイヤレス環境発電スイッチが採用されています。

オスラムではBluetooth meshを基盤とするHubSenseシステムを活用しています。同社はこのシステムを使い、ガルヒングオフィスの照明をアップグレードしました。このレトロフィットは2日足らずで完了し、穴あけ工事やケーブル工事も不要でした。同オフィスは照明制御システムとして、人感センサー、採光システム、手動制御を導入しています。

ストラトスフィアタワーはラスベガスの象徴的な建物であり、米国で最も高い自立式の展望タワーです。108階にある屋内展望デッキは、2019年7月に改装されました。その後、支配人は照明用の最新技術を導入することも決定。ワイヤレスで簡単な制御システムと独立した照明環境の構築を目指しました。そしてこの要件を完璧に満たすだけでなく、改装を行ったばかりの同フロアの営業を一切止めずに導入できるBluetooth meshの照明制御システムの採用が決まりました。

これらの例だけでなく、駐車場や美術館、学校といった欧米の多様な施設でBluetooth meshの制御システムが運用されています。この新規格は極めて汎用性に富んでおり、導入環境に合わせて様々なメリットが得られます。現時点での代表的なメリットは、レトロフィットが簡単であること、制御が柔軟に行えること、節電となっています。ですがそれだけではありません。Bluetooth meshは、Bluetooth照明ネットワークを通じてデータ主導の様々なサービスが活用できます。そのポテンシャルは極めて大きいのです。

誤解

ワイヤレス制御が、有線システムと同等の信頼性を有しているという事実を未だに信じられない方もいるかもしれません。

それも含め、現在、Bluetooth meshの規格や機能については様々な誤解があります。一因として、BluetoothにはBluetooth mesh以外にも様々な特色があるという点が挙げられます。また、照明業界はここ10年ほど、IoTに向けて邁進してきました。そうした取り組みのなかで、希望が失望に変わるような場面も決して少なくありませんでした。照明の制御は考えられていたより難しかったのです。そしてプロフェッショナル向けの要件を満たすソリューションを、テクノロジー業界が開発するには何年もかかりました。こういった経緯もあり、「ついにワイヤレス制御で有線並の信頼性を実現」と聞いてもにわかに信じられない方もいるかもしれません。そんななか今、Bluetooth meshを用いて何ができるのか。それを知っていただくには実際にBluetooth meshが使われている様子を見ていただくのが一番です。照明デザイナーの皆様には、ぜひその目でご確認いただきたいと思います。それではここで、国際規格であるBluetooth meshに関して特に多い誤解を見ていきましょう。

誤解1:Bluetooth meshネットワークは大企業や大規模施設では採用されていない、ニッチな技術だ。

これは正しくありません。テクノロジーの普及曲線でいえば、Bluetooth meshネットワークは未だ開始部分に近いと言えるかもしれません(おそらくイノベーター段階とアーリーアダプター段階の中間付近)。ですが、オスラムやZumtobel、ERP Powerといった業界でも最大規模のメーカーがすでにBluetooth meshの認証を受けた製品を販売しています。ですが比較的小規模なメーカーも、認証されたコンポーネントを市場に送り出しています。Bluetooth meshのエコシステムはオープンなものであり、認証を受けてさえいれば、地域展開の製品も世界展開の製品も同様に歓迎です。製品全体のラインを立ち上げる必要もありません。Bluetooth meshのコンポーネント(センサー、ドライバー、または照明コントローラー等)1つだけを小規模メーカーが提供することも可能です。また、Bluetooth SIGから認証された、市場の他のコンポーネントと組み合わせることもできます。さらに、上記コンポーネントのいずれも既存のワイヤレス制御設備のアップグレードに使用できるというのも注目すべき点です。Bluetooth meshのドライバーやセンサー、コントローラーが無くとも、Bluetooth meshの照明制御システムは構築できるのです。貴方のプロジェクトに適したコンポーネントを選ぶだけで、標準的なLED照明にBluetooth meshのコネクティビティを導入できます。

商業プロジェクトで言えば、すでに欧米で数百のプロジェクトが完成または進行中となっています。数字としては圧倒的ではないかもしれませんが、技術が世界的に浸透するには必ず時間がかかるものです。まず仕様の発表が行われます。次にメーカーがコンポーネントを開発し、市場に展開します。さらに、この製品を使った実生活におけるプロジェクトを展開するのにもさらに時間がかかるのです。Bluetooth meshの規格が採用されたのが2年半前であることを考えれば、その普及は速いと言えるでしょう。そして普及速度は加速の一途を辿っているのです。

誤解2:Bluetooth meshネットワークは大規模なスペースには適さない。

Bluetooth meshネットワークは分散型アーキテクチャ、高いデータレート、極めてコンパクトな無線メッセージといった特徴を有しており、大規模な空間に展開できる唯一の国際ワイヤレス規格です。また、サブネットの展開による大規模施設への対応も可能となっています。これは保守や構成のため建物全体のネットワークは維持しながら、ネットワークを複数の小規模ネットワークに分割(フロアごとにサブネットを展開)する技術です。

誤解3:Bluetooth技術は通信距離が短いため使いづらい

厳密にはBluetooth技術が近距離通信だけの技術というのは誤解です。一方、ノード間の通信には一定の制限があるというのもまた事実です。ですがメッシュトポロジーが導入されたことで、Bluetoothの照明制御ネットワークは建物全体をカバーできるようになりました。これは各ノードが別のノードにメッセージを送れるようになったためです。照明器具は建物内のいたるところにあります。そして照明器具が置かれているあらゆる部屋や廊下等にネットワークノードが展開されるため、効果的な通信が実現するのです。実際、Silvairの複数のパイロットプロジェクトと商業プロジェクトでもBluetooth SIGは支援を行いましたが、ノード間の距離が問題となったケースは1つもありませんでした。

誤解4:Bluetooth meshネットワークは未だ単一障害点の問題を抱えている

これも誤りです。Bluetooth meshは、単一障害点のない完全分散型のアーキテクチャを実現した唯一のワイヤレス規格となっています。そもそもBluetooth meshはネットワークゲートウェイを必要としません。ネットワークのコミッショニングにおいてすらゲートウェイデバイスは不要なのです。これはBluetoothの無線通信機能が市場のあらゆるスマートフォンに実装されているためです。適切なコミッショニングアプリさえあれば、スマートフォンから直接ネットワークを設定できます。そしてBluetooth meshの照明ネットワークは有線設備にあるような中央制御盤も必要としません。そのかわりに各照明器具にソフトウェア制御が行われます。照明器具自体がインテリジェントなデバイスとなり、中央制御盤を必要としない完全な制御システムを構築するのです。さらに情報中心のアーキテクチャや独自の無線通信機能を備えることで、Bluetooth meshネットワークはワイヤレス照明制御におけるシンプルさ、拡張性、信頼性という3つの問題点の解消に成功しています。

 誤解5:Bluetooth meshは、他の独自システムと同様にメーカーを囲い込むエコシステムだ。

世にある様々な独自技術とは異なり、Bluetooth meshネットワークはあらゆるチップメーカー、ソフトウェア開発者、照明メーカー等に向けて開かれたソリューションです。特定企業の製品や所有物ではないのです。Bluetooth meshは、これまで20年のあいだ成功を収めてきた他のBluetooth技術と同様、Bluetooth SIGが管理する世界的ブランドとなっています。誰でも参加し、貢献できるのです。あらゆる仕様は一般公開されています。

Bluetoothという規格

これまでも、規格の登場によって進歩は加速してきました。新たな市場が開拓され、技術的イノベーションの普及が促進されたのです。

Bluetooth技術の進歩を追うのは容易ではありませんが、それをさらに難しくしているのが、Bluetooth meshの仕様を遵守せずにBluetoothの無線通信技術を使用している独自の照明制御ソリューションが市場に出回っていることです。Bluetooth mesh規格の普及に伴い、こういったソリューションがBluetooth meshを謳うケースが見られるようになっていますが、実際はこれらとBluetooth mesh規格との共通点はほとんどありません。こうしたソリューションではまずアーキテクチャが公開されておらず、ネットワーク通信やセキュリティ面での信頼性も検証できません。また、厳密な仕様ガイドラインを遵守していないため、認証されたBluetooth meshデバイスと通信もできません。何より、ユーザーは特定のシステムプロバイダーに完全に依存することになります。そのため、もしその企業が破産したり、製品が製造中止となったりすれば、顧客には何も残りません。他の企業では互換性のあるコンポーネントを提供できないためです。だからこそ、規格は極めて重要なのです。これまでも、規格の登場によって進歩は加速してきました。新たな市場が開拓され、技術的イノベーションの普及が促進されたのです。規格により選択の自由が生まれ、透明性と安全性が確保されます。これは独自技術では決して実現できないのです。そしておそらく一番重要なのが、規格のみが、国際的に相互運用可能なエコシステムを確立できるという点です。これによりメーカー間での合意や特別な取り決め無しに、異なるメーカーのデバイス同士を組み合わせて使えるようになります。これがオープンな規格の素晴らしさであり、Bluetooth meshネットワークの意義なのです。

今後の展望

ワイヤレス制御で驚異的なレベルの信頼性を確保した今、私たちは次に何を目指すべきでしょうか?その答えはデータです。これは自然なことでしょう。資産追跡、予知保全、スペース活用、屋内ナビゲーションといった機能は、私たちがワイヤレス制御の難しさに思い至る以前から世界中で待ち望まれてきた技術です。こうした技術の実現方法を見出した今、私たちはデータの活用と収益化の方法に目を向けられるようになりました。そして市場のあらゆるスマートフォンに搭載されているBluetooth技術は、革新的なデータ主導サービスを直接エンドユーザーに届けるのに最適な技術です。完成するにはまだ時間がかかるかもしれませんが、実現に向けて確実に進んでいます。これにより、コネクテッド照明の価値が最大限に解き放たれるでしょう。3-30-300の法則からも分かるように、利用者の体験は不動産コストに最大級の影響を及ぼします。建物全体に展開するセンサーインフラとワイヤレス照明制御システムを導入すれば、私たちの職場においても、この法則とともに真に持続可能な、人間中心の建物が実現するのです。

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